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黒と茶の、サビ猫。
小柄で、尾が短く丸い。
突然現れたネコに、隼人は驚いた。
だが、慌てはしなかった。
「今からケトルが熱くなるよ。危ないから、あっちへ行こうね」
すり寄るネコを抱え、隼人は作業台からそっと降ろした。
(なぜ、ネコがここに?)
疑問はあったが、今はライブ配信のことで頭がいっぱいの隼人だ。
気を取り直して、カメラ目線を作った。
「お湯が沸く間に、フィルターを用意します。今回は、紙製のペーパーフィルターを……おやおや?」
先ほどのネコが戻って来て、隼人が広げたフィルターに顔を突っ込んでしまったのだ。
「待って。困るよ」
ネコの顔に触れたフィルターを、くしゃりと丸めて、隼人は遠くへポンと投げた。
いたずら者は、それにつられて行ってしまった。
「で、では。次に湯通しを」
またネコが来るのではないかと冷や冷やしたが、幸い三度目は無かった。
隼人は何とかコーヒーを淹れ終わり、無事に動画配信は終了した。
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