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「終わった……」  大きく息を吐き、コーヒーカップを手にした隼人だ。 「せっかく淹れたんだから、美味しくいただこう」  一口含むとリラックスして、様々なことが頭の中に湧いて来た。  笹山さんへ、報告しなくては。  比呂くんに、励ましてくれたお礼を言いたいな。  そして……。 「しかし。あのネコは、一体どこから?」  黒と茶の、サビ猫。  小柄で、尾が短く丸い、可愛いネコ。  辺りを見回すと、ネコではなく比呂が現れた。 「隼人さん、お疲れ様!」 「良かった。比呂くんが、励ましてくれたおかげだよ。ありがとう」  それから、あのネコも。 「あのネコのおかげで、肩の力が抜けたよ」 「そ、そう?」 「可愛いネコだったな。比呂くんが、連れて来たのか?」 「ま、まあ、そんなところ」  どこか、ぎくしゃくとした比呂の様子が、変だ。 (私に内緒で、勝手に連れて来たから、怒られると思っているのかな?)  そう考えた隼人は、怒るどころか好意的に比呂へ声を掛けた。 「ここは、ペット可のマンションなんだ。気兼ねなく、飼ってもいいんだよ」  だから、隠さないでここへ連れておいで。  こんな風に促すと、比呂はバスルームへ走った。

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