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「ニャァ」
「参ったな……」
そうは言いながらも、隼人は腰を落とし、ネコに向かって手を伸ばした。
「おいで。……比呂くん?」
「ニャァ」
温かく柔らかな、ネコ。
小さな、命のぬくもり。
そっと抱き上げ、隼人は慣れた手つきでその喉を撫でた。
ゴロゴロと、甘えた音が響く。
しかし、隼人はあることに気づき、落ち着かなくなってしまった。
「あの、比呂くん。このまま、ヒトの姿になってくれるか?」
一瞬、きょとんとした表情を見せたネコだったが、次の瞬間には比呂の体に変化した。
横抱きした格好の比呂の重みが、隼人の腕にぐんとかかる。
軽いネコとは違う、ヒトの体重だ。
「え、えへへ。ごめん、ね……。重いでしょ?」
その重量感に、隼人は真顔で訊ねずにはいられない。
「比呂くん……。質量保存の法則は、どうなっているんだ?」
「突っ込むところ、そこ!?」
隼人の腕の中から這い出した比呂は、改めて自己紹介をした。
「見ての通り、僕はネコのあやかしです! 立派な猫神様になれるよう、修行中です!」
よろしく、と開き直った、比呂だ。
(もうダメ。こんな気味の悪い存在、隼人さんは絶対に受け入れてくれないよね)
好きになった早々に、失恋だ。
しかし、うなだれる比呂の腕に、隼人は手を差し伸べた。
「よろしく……」
「え? ちょっと、隼人さん……?」
握手が交わされ、新しい二人の関係が始まった。
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