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 不況を乗り越えるために、この国は外国を侵略しようと動き始めた。  植民地を獲得するための、武力紛争を起こし始めた。  軍部が発言力を増し、首相が暗殺される。  さらに、陸軍が国の重臣や閣僚などを暗殺する。  この国の政治は軍部に掌握され、軍国主義化が進んでいったのだ。  隼人は、自然と握りこぶしを作っていた。 「比呂くんは、何て辛い思いをしてきたんだ……」 「大丈夫だよ。時々それなりに、良いこともあったし」 「しかし、君は。人間が最も生きづらい時代を、かいくぐって来たんじゃないのか?」  確かに歴史を紐解くと、強い者や権力を持つ者が、潤う世界だ。  比呂のように弱い存在は、なすすべもない。  権利を奪われ、財産を奪われ、自由を奪われる。  それでも彼は、がんばった。  幸い、ヒトに化けた姿の見た目は、可愛らしいのだ。  そこで、強い者の庇護のもとで、何とか生き延びようと考えた。  財閥の中枢、軍部の高官などの屋敷に使用人として潜り込み、必死で働いた。

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