56 / 229
第十二章 比呂くんがついているから
隼人へのインタビューが始まって、早くも2時間近く過ぎていた。
時刻は、18時を少し回ったところだ。
「では、桐生さん。本日は、どうもありがとうございました」
「こちらこそ。とてもいい仕事をさせていただきました」
本多と隼人が、そんな終了の挨拶を交わしている横で、紫織は壁の時計を見て舌打ちした。
「私はいつも、定時の17時には退勤する主義なんですけどね」
最後まで口の悪い部下に、本多はいら立ちをあらわにした。
「これくらい、残業の内に入らないよ!」
「パワハラのつもりですか、それって」
本多が息を吸い込み、何か言い出す前に、隼人は間に割って入った。
「すみません。私が途中で、電話なんかしたばかりに遅くなってしまって」
「とんでもない! 定刻通りに取材を始めなかった、こちらの落ち度ですから!」
本多の気が、こちらに逸れたことを見計らって、隼人は紫織に声を掛けた。
「吉永さん。良かったら、私の車で一緒に出ませんか?」
「えっ? 桐生さんは、マイカーでここへ来たんですか。自分で運転して?」
やれやれ、と紫織は肩をすくめた。
その仕草に、本多はぎょっとした。
この若手が、まだ何かやらかすというのか!?
ともだちにシェアしよう!

