64 / 229

4

 目をぱちぱちさせる紫織にグラスを手渡すと、比呂は笑顔で酒を注いだ。 「はい、どうぞ。まずは、乾杯から」  心の中に、ぐいぐい入って来る比呂に、紫織は毒づいた。 「乾杯? 一体、何に?」  それでも比呂は、怯まなかった。 「もちろん、隼人さんと吉永さんの出会いに、だよ」  すかさず、笹山が合の手を入れる。 「おいおい、比呂くん。私は?」 「あ、そうか。じゃあ、ついでに笹山さんも!」 「ついでに、だなんて。ひどいなぁ!」  とにかく明るい雰囲気だ。  紫織は、落ち着かなくなってきた。 (こんなアットホームな空間は、苦手だ)  しかし、乾杯の声は賑やかに上がった。  彼も、このパーティーの輪に加わってしまった。

ともだちにシェアしよう!