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「ほどよくフルーティな香りに、くど過ぎない甘味。いいですね、実に美味しい」 「でしょう!? 甘味の強さとボディ感が、すき焼きと良く噛み合ってるんだなぁ!」  そして笹山は、場違いな気分を持て余している紫織に、声を掛けた。 「吉永さんも! 飲んで飲んで!」 「……いただきます」 「おぉ、いい飲みっぷり!」  こんな具合に笹山は、隼人には少しだけ酒を勧め、紫織にはじゃんじゃん飲ませた。 (隼人さんが酔って、口を滑らせないように。そして、吉永には早々に酔い潰れてもらおう!)  そんな思惑を、抱いていた。  そして比呂がまた、良い働きをする。 「隼人さん、食べて。お肉、いい具合だよ」 「ありがとう」  隼人がグラスを取ろうとすると、食べる方へと持っていく。 「吉永さん、飲んで。グラス、空いてるよ」 「ああ、そうだな」  紫織が食べようとすると、飲む方へと持っていく。  とうとう紫織は、酔いを自覚しないほどの酔っぱらいに、出来上がっていた。

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