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第十四章 ずっと一緒に

「俺はね、桐生。あんたの、その偽善者ヅラが気に入らないんだ」  隼人宅に招かれ、笹山と比呂にさんざん飲まされ、泥酔してしまった紫織。  一人称が『私』から『俺』に変わり、果ては隼人を『桐生』と呼び捨てにする始末だ。 「偽善者、か。どんなところが、そう見えるんだろうか?」  先ほどから、延々と紫織に罵られながらも、柔和な態度を崩さない隼人。  そんな彼に、紫織はさらに絡むのだ。 「ほら、そういうところだ。自分で、解らないのか? 何を言っても、軽く受け流す!」  本気で、本心で、他人と向き合っていないんだ。  こういった紫織の言葉は、酔っているとはいえ、鋭く隼人を評している。 (勉強になる。とても、参考になる)  隼人は、すでにアルコールが抜けた状態だ。  どんな厳しい意見でも、冷静に受け止めて、胸に刻んでいた。  自分には、応援してくれる人だけでなく、少なからずアンチも存在する。  それは、百も承知だ。  現代の、SNSが発達した社会では、批評や批判を越えて、誹謗中傷で叩かれることも多々あった。  だが隼人には、なぜアンチの人間が、自分を目の敵にするのか掴めていなかったのだ。 (今夜、吉永さんを誘って、本当に良かった)  しみじみと、隼人はそう思っていた。

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