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(比呂くん。まるで自分のことのように、怒ってくれるんだな)  紫織に責められているのは、隼人なのだ。  それなのに、我が事のように言い返す比呂の行動もまた、優しさなのだろう。 (私に欠けているもの。それは比呂くんのような、ひたむきさ、なのかもしれない) 「もう、全く! 話にならん!」  とうとう紫織は、ごろんと横になってしまった。  リビングのフロアに敷かれたラグの上に寝転がり、いびきをかき始めてしまった。 「吉永さん、せめてソファで……」  言いかけて、隼人は苦笑いした。  ソファには、すでに笹山がぐうぐう眠っているのだ。 「あらら。酔っぱらいが二人も、寝ちゃったよ」  比呂も、笑顔だ。  隼人は彼に、軽く首を傾けた。 「比呂くん、ありがとう。吉永さんから、かばってくれて」 「ううん。だって吉永さんったら、ひどいことばっかり言うんだもん」 「でも、彼の言い分も解るよ。今夜は、勉強になった」 「隼人さんは、やっぱり優しいね」  二人、そっと顔を寄せた。  小さく短い、キスをした。

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