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酔っぱらいの笹山を、何とか起こした隼人は、彼に肩を貸しながら歩いた。
「比呂くん。私は笹山さんを、タクシーで住まいまで送って来るよ」
「気を付けてね」
それはそうと、と比呂は心配になった。
すでに0時近いが、隼人の明日のスケジュールは、どうなっているのだろう。
「隼人さんは、明日何時に起きるのかな?」
「明日は、午前6時からの『ウィークエンド・モーニング』にゲスト出演するから……」
遅くとも、3時には起きないとね。
そんな隼人の返事に、比呂は息を飲んだ。
「ちょ、それじゃあ。2時間くらいしか、眠れないじゃん!」
「大丈夫。これくらい、いつものことだから」
いつものこと、って。
(いけないよ、隼人さん。いつか、病気になっちゃうよ)
言葉は、隼人に届かない。
彼はもう、笹山を連れて外へ出てしまっていた。
朝食の準備はしなくていいから、比呂くんは寝ていてね。
こんな、優しい言葉を残して。
「隼人さん……」
『比呂くん。これからも、ずっと一緒にいてくれるかい?』
心から、温かい言葉を比呂に贈ってくれた、隼人。
「ずっと、一緒にいたい。一緒にいたいよ、隼人さん」
だけど……。
「無理がたたって、入院でもしたら。一緒になんか、いられないじゃん……」
比呂の小さな胸は、痛んだ。
最悪、早いうちに死別。
そんな、ぞっとする思いは、首を横に振って必死で捨てた。
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