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第十五章 まさか吉永さんが!

「隼人さん。早く帰って来てね」  明日は仕事のために午前3時起き、という隼人の健康を思うと、心が痛む比呂だ。 「せめて、帰ったらすぐにシャワーを浴びて、眠れるようにしておこう」  不安を胸に、比呂はまず食器を片付けようと、リビングへ戻った。  そこには、呑気に爆睡している紫織がいる。  酔いが回って暑いのか、隼人がせっかく掛けてあげた毛布は、すっかりはだけてしまっていた。  明日は土曜日なので、彼は出社しなくてもいいのだ。  親切な隼人は、紫織はマンションに泊める、と言っていたが。 「何か、ムカつく!」  フロアラグの上に横たわる紫織の尻を、比呂は軽く足蹴にした。  すると。  彼の尾てい骨あたりから、シュッと長いものが現れたのだ。 「えっ!?」  ネコのあやかしである比呂には、それが何かはすぐに解った。 「え、あ、うぇ!? 尻尾!? し、しかも、二股!?」  紫織の正体は、二つに分かれた尾を持つ、ネコのあやかし。  猫又、だったのだ。

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