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 隼人宅でのすき焼きパーティーで、酔って眠り込んでしまった、紫織。  そんな彼の、背中の終わりから長く伸びた、二股の尾。  比呂は、目を良くこすってから、もう一度見直した。  しかし、そこにあるのは、やはり黒いつややかな毛で覆われた、あやかしの証だ。 「まさか、吉永さんが。僕と同族だったなんて……」  いや、厳密に言えば、同族ではない。  比呂は何度も生き死にを繰り返して徳を積み、猫神様を目指す、あやかし。  かたや猫又は、ひどく長生きしたネコが妖怪化した存在だ。 「さ、触ってみても、いいかな……?」  そっと腕を伸ばし、比呂は紫織の長い尾に触れた。 「む……」 「うッ!」  唸る紫織に、比呂は素早く手を退いた。  だが彼は起きる様子も無く、その長い尾の先をぱたぱたと動かした。 「むむ……。むにゃむにゃ……むにゃ~ん」 「ま、まさしく猫語!」  どうやら紫織は、大変ご機嫌な様子だ。  それもまた、比呂は気に入らなかった。 「起きろ、このぉ!」  今度は思いきり、紫織の尻を蹴飛ばした。

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