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「絶対に、ダメ! 隼人さんより先に、お風呂なんか使わせないから!」 「ネコのくせに、キャンキャン吠えるな」  比呂の悲鳴は受け流し、紫織はゆっくり立ち上がった。 「シャワーだけ、使わせてもらう。先に誰かが浴室に入った方が、蒸気で温まるだろう?」 「あ。それは、確かにそう……」  バスルームの方へと消える紫織の背中に、比呂は不平をこぼした。 「働かないのに、口ばっかり達者なんだから」  しかし、愚痴を言っても始まらない。  紫織を罵る間にも、時は過ぎてしまうのだ。  比呂は寝室で、ベッドメイキングにいそしんだ。  清潔なリネンを準備し、穏やかなアロマを焚き、エアコンで室温湿度を整えた。 「たった2時間でも、熟睡して疲れを取ってね。隼人さん」  最後に、枕へ投げキッス。  これで完了だ。 「ホントは二人で、ここに寝て。そして、エッチしたいんだけど……」  今夜は紫織という疫病神が泊まると言うのだから、我慢だ。  比呂が寝室を出たところで、ちょうど隼人が帰宅した。

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