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「おかえりなさい、隼人さん!」 「比呂くん、寝てても良かったのに」 「僕は、ハウスキーパーだよ? そんなわけには、いかないよ」 「ありがとう」  隼人から、脱いだコートを受け取り、比呂は訊ねた。 「笹山さんは、大丈夫だった? 途中で吐いたり、してない?」 「とてもご機嫌だったよ。顔色も良かったし、心配ないと思う」  そんな話をしながら二人でリビングへ進むと、そこには湯上りでホカホカの紫織がソファにくつろいでいた。 「お風呂、先にいただきましたよ」 「吉永さん、お目覚めでしたか」  すでに髪まで乾かしている紫織に、比呂は心の中で舌打ちした。 (おのれ。勝手に、ドライヤー使ったな!)  しかし紫織は、さらに比呂の怒りをあおってくる。 「私は、そろそろ眠いんですがね。どこで休めばいいのかなぁ?」 (さっきまで、床でぐうぐう寝てたくせに!)  比呂は、ソファに畳んでおいた毛布を、ボンと強く叩いた。 「吉永さんは、ここで……」 「私のベッドで良ければ、使ってください。客室を準備してなくて」 「隼人さん!?」  何と、この家の主人は、ずうずうしい紫織に、寝室まで提供するというのだ。

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