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「いや、隼人さん。さすがに、それはちょっと!?」  止めようと必死になる比呂を尻目に、紫織はソファから立ち上がった。 「では、遠慮なく。おやすみなさい、桐生さん」 「おやすみなさい」  ぐぬぬ、とこぶしを震わせる比呂に、紫織はニヤリと笑った。 「おやすみ、比呂くん」 「そのまま、永遠に目を覚まさなくてもいいんだよ!」  きぃ、と癇癪を起こす比呂を、隼人はなだめた。 「どうしたんだ、比呂くん。そんなこと、言うもんじゃない」 「どうしたも、こうしたも! 隼人さん、優しすぎ!」 「吉永さんは、大切なゲストだよ? 最高のおもてなしを、しなくちゃ」 「うぅ……」  まだ、こぶしを握りしめている比呂の手を、隼人はそっと取った。 「比呂くんは、もうバスを使った?」 「まだ、だけど」  そこで隼人は、唇を比呂の耳元に近づけた。 「一緒に、入る? お風呂」 「え!?」  思わず声を上げた比呂の口に、隼人の手が当てられた。 「声が、大きいよ」  これはつまり、紫織に聞かれてはまずい、ということだろう。  そこで比呂も、小声で言った。 「いいの?」 「その方が、時短になるよ」  そうは言っても、隼人の目の色は何だかエッチだ。  比呂は、すっかり機嫌を直して、バスルームにお邪魔した。

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