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 浴室は、先ほどまで紫織が使っていたせいで、温かかった。  ほんの少しだが、彼でも役に立ったということか。  隼人と比呂、二人でシャワーを分け合って一緒に使い、シャボンを泡立てて洗いっこをした。 「比呂くん、そんな所を熱心に洗っちゃダメだ」 「隼人さんこそ、僕の大事な部分ばっかり触ってるじゃん!」  笑い合い、湯を掛け合い、綺麗になったところで、バスタブに肩まで浸かった。  二人分の体積なので、湯が勢いよく溢れる。  そんな些細なことまで可笑しく、身を寄せ合って笑った。  だがしかし。 「隼人さん。シャワーのお湯、止めなくてもいいの? 水道代が高くなるよ」  隼人さんは寒いのかな、と比呂は考えた。  派手に水音を立てながら、シャワーの湯は流れていく。  蒸気がもうもうと上がり、まるでサウナだ。 「シャワーの音を立てておけば、少しくらいの声は消せるかと思って」 「えっ?」 「比呂くん……」 「は、隼人さ……」  比呂の言葉は、途中で隼人の唇にすくわれてしまった。  深く繋がり、熱く求めて来る隼人だ。 「ん、んぅ。ん、む……」  すぐに比呂も瞼を閉じて、舌をひらめかせた。  夢中で互いを求め合う夜が、ようやく訪れた。

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