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「隼人さん、大丈夫かなぁ。ライブ中継だよね、この番組」  テレビの前でソワソワしている比呂の前に、ぬっとトレイが差し出された。 「ちょっと! 邪魔だよ、見えないじゃん!」 「せっかく、飯を運んでやったのに」  紫織が、ローテーブルの上に、トレイを置いた。  上には、隼人が比呂のために用意していた朝食が、乗っている。 「あ、ありがと……」 「ふん。一応、礼くらいは言えるんだな」  そのまま比呂の隣に腰掛け、紫織もテレビを眺め始めた。 「どうした。早く、食えよ」 「うん」 (結構、良いとこあるじゃん)  ほんの1㎜ほど、比呂は紫織を見直した。  ちょっぴり温かくなった心で、クロワッサンを頬張った。  その瞬間、画面に大きく隼人が映った。 『本日は、ゲストコメンテーターとして、桐生 隼人さんをお招きしております』 『おはようございます。よろしくお願いします』 「隼人さん! カッコいい! カッコいいよ、隼人さん!」  盛大に吹き飛ばしたクロワッサンで、滅茶苦茶に汚れてしまったテレビだ。  それを紫織が、ため息をつきながらティッシュで拭った。

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