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「ふん。どこが良いんだか、こんな人間」  しかし比呂の耳には、そんな紫織の嫌味も聞こえない。  うっとりと、スーツ姿がバッチリ決まった隼人を、眺めるだけだ。 「いい……。柔らかな笑顔……。甘いイケボ……。いい……」 「まぁ、見た目はいいな。確かに」  だが、とその目を光らせる、紫織だ。 「コメントを求められた時が、見物だな。大恥をかくぞ、きっと」 (ろくでもないことしか、言えないに決まってる)   あの、上っ面だけの優しさが、崩れ去る。  底の浅い物分かりの良さが、露呈する。  二人が見守る中、番組は進行していった。  世界情勢、国内政治。  経済に、文化に、スポーツ。  様々なテーマのニュースが、テンポよく流れていく。  そして、男女二名のニュースキャスターが、改まって表情を切り替えた。

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