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『では、今週の探求ニュースです!』
『今日は、水曜日に報道された問題を、探求していきます!』
『桐生さんも、よろしくお願いします』
『はい。どのようなニュースを、探求するのでしょうか?』
『探求のテーマは、保護猫の問題です。まずは、VTRをご覧ください』
ネコ、と聞いて、比呂も紫織も反応した。
これまで、のんびりと見ていた画面に、集中した。
隼人もまた、ネコという言葉に反応していた。
胸にすぐ浮かんだのは、やはり比呂だ。
彼は隼人にとって、大切な人であり、大切なネコである。
それを忘れないようにしなければ、と心して背筋を伸ばした。
短くまとめられたVTRには、保護猫カフェの様子が収められていた。
それを視聴した後、スタジオのカメラが再び隼人に向けられる。
「桐生さんは現在、公開された動画に映っていたネコちゃんが、話題ですが」
「あの子は、どういった経緯で、桐生さんに飼われるようになったんですか?」
キャスターたちの問いかけに、隼人は考えた。
(おそらく、この方たちは。比呂くんのことを、保護猫と決めつけて質問している)
確かに、そう思われても仕方がない。
そして、そんな保護猫を飼っている『優しい桐生 隼人』を、演出したいのだろう。
隼人はそれを承知の上で、コメンテーターとしての仕事に、取り掛かかり始めた。
周囲が欲する『桐生 隼人』を演じるのではなく、自分の思いを、自分の言葉で、語り始めた。
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