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「隼人さん。僕のこと、家族、って。家族……うぅ……家族!」
家族。
100年間も生きて来て、決して比呂が手に入れることができなかったもの。
それが、家族だった。
恋人より、愛人より、もっともっと、深いつながり。
それが、比呂にとっての、家族だった。
憧れの、関係だった。
感極まって涙をぽろぽろこぼす比呂の頭に、突然何かが落ちてきた。
「痛い!」
見ると、それはティッシュボックスだ。
「涙と洟を拭け。みっともない奴だな」
紫織が、ティッシュボックスを上から落としたのだ。
「もう! せっかくの気分が、台無し!」
それでも、ありがたくティッシュを使って、涙をぬぐった。
何枚でも、使った。
そんな比呂を見下ろしながら、紫織は昨日の、あるシーンを思い出していた。
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