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『なぜ、桐生 隼人ともあろう御方が、あんなネコを飼ってるんですか?』 『私にとっては、大切な家族なんですよ』 『イメージダウンじゃないですか? あなたらしく、高価な血統書付きでも飼えばいいのに』 『縁がありましてね、あの子に。可愛いですよ、とても』    単独インタビューの合間に、隼人と交わした会話だ。 「家族、か」  ふん、と鼻を鳴らし、紫織は冷笑した。  今は、すぐ傍で比呂が感激の涙を流しているので、黙っていたが。  するとそこで、キャスターにカメラが戻った。 『桐生さんが、家族、とまで言う、ネコ。そのネコたちが、危機に陥っています』 『視聴者の皆さんからも、反響をいただきました』 『水曜日にも放映した、VTRをご覧ください』  比呂は、テレビに映し出される同胞の悲しい現状に、今度は悔し涙を流し始めた。  心無い人間に虐待される、ノネコ。  自動車にはねられ、道路の隅で命尽きている子ネコ。  多頭飼いが崩壊し、ゴミ屋敷になってしまった中で、飢えている多数のネコたち。 「ひどい……!」  それは、猫神様を目指す比呂にとって、早急に何とか手を打ちたいアクチュアリティーだった。

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