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比呂と同じく、隼人も悲惨なネコたちの様子に、眉根を寄せていた。
(比呂くんと暮らすようになってから、ネコについては一通り知識を備えたつもりだったが……)
やはり、映像を実際に見ると、想像以上に胸が痛んだ。
「いかがでしょうか、桐生さん」
「えっ?」
「このネコたちを、どうお考えになりますか?」
キャスターの質問は、今の隼人には酷だった。
事前に軽く打ち合わせはしていたものの、ネグレクトを受けているネコを、初めてこの目で見たのだ。
すぐには、返事のしようがない。
(いや。『桐生 隼人』の答えなら、できる)
見ていて、辛くなります。
とても、可哀想です。
救う手立ては、ないのでしょうか。
こんな、優等生のセリフならば、すらすら言える。
そして、スムーズに番組を進行させれば良いのだ。
だがしかし。
「……」
「あの。桐生さん?」
「すみません。ちょっと、言葉が出なくて……」
キャスターは、隼人の言葉に困惑した。
(あの桐生さんが、喋ってくれないなんて!)
しかし、カメラでアップにされた隼人の悲痛な表情は、どんな言葉より雄弁だった。
彼の心情を、物語っていた。
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