102 / 229
2
『困ってるんですよね。何度注意しても、聞いてくれませんし』
こう語るのは、近隣住民たちだ。
『鳴き声が、うるさいんですよ』
『家の周りでオシッコしたりするから、臭いがね』
『衛生的に考えても、良くないですし』
『避妊とかしてないんで、ネコが増える一方でして。どうしたもんかなぁ』
こんなインタビューが終わり、キャスターたちにカメラが戻った。
「かわいそう、という理由で、野良猫にエサやりを行っている方がいます」
「こういった無責任な行動は、近隣住民とのトラブルにも繋がりますね」
そこで、前回同様に隼人へと話が振られた。
「桐生さんは、いかがお考えですか?」
「桐生さんが、家族として親しむネコちゃんですが、人間が迷惑している事例もあります」
まるで、私が責められているようだ、と隼人は感じた。
しかし、その顔は穏やかだ。
悲しいネコの姿に、苦悶の表情を見せていた隼人では、なかった。
応えはすでに、心の中から湧いていた。
「私はまず、このご婦人に寄り添うことが大切かと思います」
キャスターは、驚いた様子だった。
ともだちにシェアしよう!

