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「何を言ってるんだ、お前は!?」  紫織は、テレビの向こうの隼人に、思わずそう声を張った。 「静かにしてよ。隼人さんの声が、聞こえないじゃん!」  比呂が、ぶぅぶぅ不平を言ったが、紫織はまだ大きな声を上げている。 「だって、そうだろう。今は、ネコの話をしてるんだぞ?」  だのに隼人は、老婦人について述べているのだ。 「ふん。やっぱり桐生も、ただの人間だな。ネコよりヒトの心配を、先にする」  どさり、とソファの背もたれに身を任せ、紫織は冷めた目でテレビを観た。  だが、その顔色が段々と変わっていくこととなる。  紫織はまだ、それに気付いてはいなかった。 『このくらいの年齢の方々は、空腹の辛さを知っている人が多いんです』 『はい。それが、野良猫への餌やりと、どういった関係が?』 『目の前に、お腹をすかせた家族がいる。すると、どうにかしてあげたいと考えるのが、人間ではないでしょうか』 『なるほど。それで、餌やりを』 『私事で恐縮なのですが、祖父に、曽祖父の話をしてもらったことがあるんです』  隼人は、こういった猫害が、非常にデリケートな問題であることを、承知していた。  一歩間違えると、大炎上だ。  だが語らずにはいられない衝動が、彼にはあった。  熱い想いを、柔らかく静かに、話し始めた。

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