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隼人の顔が画面から消えると同時に、比呂はソファの横に突っ立ったままの紫織に、声を掛けた。
「吉永さん、一体どうしたの?」
「……寝る」
「はぁ?」
「ベッドで、ちょっと寝る」
待ってよ、と比呂は紫織の袖をつかんだ。
「何か変だよ? 具合でも、悪いの?」
彼の顔は、血の気が引いたように青いのだ。
だが紫織は、比呂の手を雑に振り払った。
「とにかく、俺は寝る! 起こすなよ!」
「せっかく、心配してやってるのに!」
大股で寝室へ向かう紫織の背中に、比呂は舌を出して見せた。
「姿は大人のくせして、妙なところで子どもっぽいんだから」
ブツブツ言いながら、床にこぼれてしまったミルクティーを、拭きとった。
顔を上げるとテレビCMはすでに終わり、番組は終盤に差し掛かっていた。
後は、猫害を少しでも無くし、ネコたちとの共存を模索する、活動家たちの紹介だ。
飼い主のいない猫の問題に、地域住民、ボランティア、そして行政の、三者が協力し合って取り組む『地域猫活動』。
猫の保護団体が中心となって運営し、保護猫を受け入れて、里親を募集する『保護猫カフェ』。
そういった事例がVTRで紹介され、愛らしいネコたちの姿に、スタジオは和やかな空気に包まれた。
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