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控室に入った笹山は、隼人にペットボトルのお茶を渡しながら、興奮したように話し始めた。
「裏で、モニター使って観てたんだけどね。良かったよ、桐生さん!」
「私は、うまく話せてましたか?」
隼人の問いに、笹山は満面の笑みだ。
「またまたぁ! 巧く喋ろう、なんて思ってなかったくせに!」
実に良かった、と彼は繰り返した。
「これまで桐生さん、プライベートは一切口にしなかったじゃない。それが、ひいおじいさんの話だなんて!」
さすが、芸能活動25年。
さすが、新生・桐生 隼人。
こんな風に、笹山は手放しで隼人を褒めちぎった。
褒めていたかと思えば、急に手にしていたペーパーバッグを、目の高さまで上げた。
「あ、忘れるところだった。これ、差し入れ!」
彼は、切り替えがとても速い。
だからこそ、敏腕マネージャーと、周囲から認められているのだが。
「気を遣わなくても、いいのに。すみません」
隼人はお礼を言って、バッグの中を覗いた。
そこには、有名洋菓子メーカーのパッケージが、入っている。
開けてみると、ネコの形をしたクッキーだった。
笹山の笑顔は、明るい。
「可愛いでしょ! 桐生さんの、今日の仕事にぴったり!」
そのネコ型クッキーで、隼人は弾かれたように頭を上げた。
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