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「こちらの部屋で、二次選考を行います」
「ありがとうございます」
隼人はスタッフに連れられ、ビル内のドアの前に立っていた。
大部屋の控室には、一次の書類選考を通った人間が、30名ほど集められていた。
それが順番に、一人ずついなくなる。
このドアの向こうで、二次選考を受けるためだ。
やがて隼人の番が巡ってきて、スタッフが彼に指示を出した。
「ドアを開けて室内に入り、何らかのリアクションを起こしてください」
「はい」
はい、とは答えたものの。
(何らかのリアクション? 自由表現が試されるのか?)
疑問が湧いたが、スタッフは続けた。
「選考中は、ドアを閉めさせていただきます。ドアがもう一度開くと、オーディションは終了です」
「解りました」
解った、と言うしかない。
(青原監督は、いつも変わった方法で、俳優を選ぶからなぁ)
ただ、今の私ができることは、このドアを開けて中に入ることだ。
覚悟を決めて、隼人はドアノブに手を掛けた。
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