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『隼人さん、お疲れ様。
寝坊して、ごめんなさい。
朝ごはんまで用意してくれて、ありがとう!
隼人さんのテレビ、リアルタイムで観たよ!
すっごく良かった!!
僕たちネコのこと、真剣に考えてくれてありがとう。
感想とか話したいけど、今夜も遅いのかな?
何時くらいに帰れるか解ったら、連絡してね!』
覚悟を決めたつもりだったが、ドアノブに触れた途端に、隼人の頭に比呂からのメールが浮かんだ。
すぐに返信してくれたのが嬉しくて、控室で何度も読み返していたのだ。
それが良い方に働いたのか、隼人から無駄な力が抜けた。
全く素の状態で、彼は室内へと足を踏み入れた。
その途端、思わず声を上げていた。
「やぁ、何てことだ! 君が、待っててくれたのかい?」
そこには、青原監督の姿は無かった。
映画関係者もいなければ、椅子などの家具も何もない。
窓すらない、壁も床も天井も、真っ白に塗りつぶされた部屋だった。
ただ、大きなクマのぬいぐるみが、床に座らせてあった。
いや、大きな、どころじゃない。
巨大だ。
その高さと太さは、まるで幕内力士ほどはある。
ぬいぐるみなので、さすがに体重は、100kg以上あるとは思えないが。
隼人は浮き浮きと、そのテディベアに近づいた。
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