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第二十五章 見られた!
「ん? んんん?」
比呂は、瞼を閉じたまま、鼻をひくひく動かした。
いい匂い。
くんくん、何だかいい匂い。
(知ってるよ、僕。この匂い)
これは、隼人さんの匂い。
大好きな隼人さんの、大好きな匂い。
(でも……?)
比呂は、そこで幸せな気持ちに、疑問を割り込ませた。
隼人からの連絡では、彼は今夜遅くなるはずだ。
夕食は、CM撮影の打ち合わせを兼ねた接待を受けるので、用意しなくてもいい、と。
そう。隼人さんは、ここにいるはずがない。
(だったら、これは夢だよね)
一人で簡単な夕食を済ませた後、比呂はソファでうたた寝をした。
ソファの上で見ている、夢だ。これは。
「比呂くん」
(む? ボイス搭載の、夢か?)
それって、いいじゃん!
「隼人さん、好き……」
だったら、僕もと、比呂は想いを口にした。
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