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変だな。
(匂い、声、触感、味……。ずいぶん、リアルな夢だよ?)
これに視覚が加われば、五感全てを網羅する。
試しに比呂は、そっと瞼を開けてみた。
「ようやく、お目覚めだね。比呂くん」
「は、隼人さん!?」
本物? と、比呂は隼人の腕やら肩やら、軽く叩いて確かめた。
「嫌だなぁ。夢と思ってたのか?」
「だって。隼人さん、今夜は遅くなる、って」
「もう、23時だ。充分、遅いよ」
少し、端折ったけどね。
そう言って、隼人はニヤリと笑った。
「実は接待の二次会で、クラブへ誘われたんだけど」
「高級クラブ!?」
「まぁ多分、そう」
「ぐぬぬ……」
比呂の頭の中に、綺麗なお姉さんや、イケメンのお兄さんに囲まれて、喜んでいる隼人の姿が浮かんだ。
「隼人さんのバカ! 浮気者!」
「ちょっと待って! 行ってないよ!」
行ってないから、23時に帰った。
午前様にならずに済んだ、と隼人は必死で説明した。
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