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「比呂くんの顔を、早く見たくて。君に、早くキスしたくって」 「そ、それは。その……」  比呂は、頬も耳も、真っ赤にした。  下を向いたまま、小さな声でつぶやいた。 「ありがと。嬉しい……」  そんな比呂の仕草が、たまらなく愛おしい、隼人だ。 「照れてるんだな。比呂くん、顔を上げて。もう一度、キスしよう」 「ダメ! 恥ずかしいから!」  もう、顔じゅうが真っ赤なのだ。  とても、隼人に見せられない。  比呂は、必死で話を逸らした。 「あの、さ。今日、メール、くれたよね」 「ぅん? ああ、そうだった」  隼人は、比呂に心から礼を言った。 「比呂くんは、すぐにお返事メールをくれたよね。嬉しかったよ、ありがとう」 「お仕事の、邪魔にならなかった?」 「とんでもない。逆に、すごく励まされたよ。おかげで、いい仕事ができた」 「そう言えば。大きなクマさんと、一緒だったけど!?」  キャストオーディションを思い出し、隼人は明るく笑った。  自分の奇妙なリアクションを語り、落選間違いなしだと、笑った。

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