125 / 229

5

「落選だと、残念じゃないの? 笑ってても、いいの?」 「いいんだ。映画の撮影に入ると、少なくとも一年間は、スケジュールが過密になる」  そうなると、比呂くんとこうして、ゆっくりできないじゃないか。  ソファに掛けた隼人の体は、比呂に密着している。  肩を抱き、その頬に手のひらを当て、優しく微笑んでくる。 「隼人さん……。僕、嬉しい。すごく、嬉しい……!」  もう一度、二人は熱いキスを交わした。  身も心も、ぴったりと一つに重ねた。 (あぁ。このまま、エッチしちゃいたい!) (さすがに、シャワーを使わないと。待てよ。昨夜みたいに、バスルームで……)  比呂と隼人、それぞれの思惑が入り乱れる中に、異質な声が響いた。 「第三者が、同じ屋根の下にいるというのに。イチャイチャしやがって」  隼人と比呂は、その声にピタリと動きを止めた。 「え……?」 「あ……!」  声の主は、寝室からようやく出てきた、紫織だった。 「よ、吉永さん!」 「吉永さん、まだ居たの!?」 「居て、悪かったな」  しまった、と隼人は自分の軽はずみな言動を、猛省した。 (比呂くんとのことを、記事にされるかもしれない!)  警戒しながら、隼人は紫織を見ていた。  彼の出方を、ただ待った。

ともだちにシェアしよう!