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第二十六章 紫織の秘密
「第三者が、同じ屋根の下にいるというのに。イチャイチャしやがって」
紫織がリビングに現れたことによって、その場の時間が一瞬、止まった。
隼人、比呂、そして紫織。
三者三様、それぞれが考えた。
(吉永さんに、比呂くんのことだけは悪く書かないように、頼まなければ!)
(バレた! 吉永さんは意地悪だから、絶対スキャンダルにしちゃうよね!?)
(ハウスキーパーの比呂が、住み込みで。そして、桐生とデキてるとは、な)
これ以上、沈黙が続かないようにと、隼人が口を開きかけた。
だが、一呼吸早く、比呂が先に声を上げていた。
「吉永さん! このことをバラすと、吉永さんの秘密も喋っちゃうからね、僕!」
「このこと? 何のことだ?」
「とぼけてる! 見ただろ。僕と隼人さんが、キスしてるところ!」
その途端、隼人の手のひらが比呂の口を、慌ててふさいだ。
「比呂くん。喋っちゃダメだ」
「むぐ?」
二人の様子に、紫織は口の端を上げた。
「なるほど。これで、証拠もバッチリ録音できた」
後ろに隠していた手を、紫織はゆっくり前へ出した。
そこには、スマホが握られている。
そして隼人の予想通り、録音アプリが起動されていた。
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