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 リビングに残された隼人と比呂は、顔を見合わせ首を傾げた。  あれだけ憎々し気に振舞っていた紫織が、妙に優しい言葉を掛けてきたのだ。  これは、変だ。 「比呂くん。吉永さん、何だか様子がおかしいと思わないか?」 「それは、そう。実は、朝から変だったよ」  正確に言えば、隼人がゲスト出演した番組を見てから、おかしくなった。  比呂は隼人に、紫織の異変について打ち明けた。 「吉永さんね、僕と一緒にテレビを観てくれたんだよ」 「本当? それは、嬉しいなぁ」 「何か、ブツブツ悪口は言ってたけど」 「あ、やっぱり……」  でもね、と比呂は身を乗り出した。 「確か……隼人さんが、ひいおじいさんの話をした後、だったかな」  突然、彼はマグカップを落としたのだ。  驚いた比呂が見上げると、その顔色は血の気を失い、青ざめていた。 「後は、寝室に籠っちゃったんだ。寝るから、絶対に起こすなよ、とか言って」 「なるほど」  よし、解った。  隼人は明るい声でそう言うと、勢いよくソファから立ち上がった。

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