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湯上りでホカホカの、隼人。
そんな彼に寄り添う、比呂。
二人を前に、紫織は静かに話し始めた。
「桐生。お前の曽祖父は、今どうしてる? お元気か?」
意外な導入に、隼人は驚いた。
(てっきり、私と比呂くんの秘密を守る代わりの、対価を要求してくると思っていたのに)
だがそこは顔には出さず、ただ彼の質問に答えた。
「生きていれば、100歳はとうに越えていますよ。すでに、故人です」
「そうか……」
紫織の肩が、少し落ちたように見える。
しかし、次にはすぐに顔を上げ、目を光らせた。
「俺の提示する要求は、ただ一つ」
人差し指を立て、声を潜める様子に、隼人も比呂も緊張した。
「桐生には、しばらく仕事を休んでもらいたい。そうだな、一ヶ月くらいは」
そして、と続けた。
「俺を、墓参りに連れて行って欲しいんだ。その、ひいおじいさんの眠る墓へと」
それを聞いた比呂は、思わず叫んでいた。
「吉永さん! もしかして、隼人さんが朝に話してた、黒いネコって!」
うん、と紫織はうなずいた。
「桐生のひいおじいさんに救われた、黒いネコ。それは俺だった、というわけさ」
なんて巡り合わせだ、と隼人は驚きを隠せなかった。
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