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第二十八章 比呂くん可愛い

 隼人と比呂に過去を語った後、紫織はマンションから出て行った。  あの横柄で辛辣な態度は鳴りを潜め、ただ静かに帰って行った。 (おそらく、私のひいおじいさんのことを思い出して。それで)  それで、いろいろと考えるところがあるのだろう。 (考える、といえば。私も、いろいろ考えなくては)   『桐生には、しばらく仕事を休んでもらいたい。そうだな、一ヶ月くらいは』 『俺を、墓参りに連れて行って欲しいんだ。その、ひいおじいさんの眠る墓へと』  隼人は、紫織との約束を、しっかりと胸に刻んでいた。  どうやって、一ヶ月も休養を取るか。  まずは、そこだ。 (大きな問題だな。すでにスケジュールは、一年先まで埋まってる)  それまで、吉永さんに待っていてもらうか?  いや、それでは胸の内を明かしてくれた彼に、申し訳ない。 (吉永さんは、今すぐにでも墓参りに行きたいだろうから……)  そこで隼人は、ぎゅっと鼻をつままれた。 「ぅぐ!」 「隼人さんったら、もう!」  今まで隼人の髪を、優しく弄っていた比呂の手が、彼の鼻梁を力任せにつかんだのだ。

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