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「あのね。一ヶ月間休んでも、休まなかったことになる方法が、あるんだけど」
「何かな、それは。まるで、なぞなぞみたいだけど?」
「僕、時間遡航の能力を持ってるんだ」
つまり、長く仕事を休んでも、時を遡って一か月前に戻れば、休んだことにはならない。
そう、比呂は説明した。
「すごいな、比呂くん。すでに神様みたいな能力を、持ってるんだね」
「ううん。僕なんか、まだまだだよ。猫神様の力は、こんなもんじゃないし」
自分はまだ100年くらいしか生きていないので、遡れる時間もその程度なのだ、と比呂は説明した。
「ありがとう、比呂くん」
少し心が軽くなった隼人は、その表情も明るい。
そんな彼の笑顔に、比呂も嬉しくなった。
「ところで、今日のスケジュールは?」
「うん。割と、ゆっくりできる。午前は笹山さんと、今後の活動の打ち合わせだ」
「午後は?」
「新曲のレコーディングだよ。一発で決まれば、すぐに終了さ」
「決まらなかったら?」
「OKが出るまで、帰れない」
うわぁ、と比呂は後ろ向きに仰け反った。
「なるべく一発で決まるように、お祈りしてるよ!」
「そうしてくれ」
レコーディングが終了したら連絡する、と約束し、隼人は出かけて行った。
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