147 / 229

2

 食後、リビングに移動した三名は、比呂が淹れたハーブティーをいただきながら話をした。 「それで。吉永さんが提示した、一ヶ月の理由、とは?」 「ああ。……ところで、酒は無いのか?」 「ダメ! 飲んだら、真面目な話なんかできなくなるから!」  いちいち怒る比呂に舌打ちした後、紫織は口を開いた。 「時間をかけて、いろいろ見聞きしたいんだ。桐生のおじいさんから、ひいおじいさんの話をじっくり聞きたい」」 「なるほど」 「それから。俺の故郷の今を、見たいとも思ってる」  故郷、と比呂は繰り返した。 「吉永さんにも、生まれ育った場所があるの?」 「あるさ。さすがの俺も、初めから猫又だったわけじゃない」  素養を持って生まれたネコが、20年以上生き抜くことができれば、あやかしと化す。  そう、紫織は説明した。 「どんな所だったんでしょう。吉永さんの故郷は」  隼人の問いには、フンと鼻を鳴らす紫織だ。 「ひどい田舎さ。離島なんだ。小さな島で、船で渡らなきゃ行けない」  貧しくて、不便で、刺激が無くて。  そんな暮らしに嫌気がさして、俺は故郷を捨てた。  紫織は、少し顔を歪めながら語った。

ともだちにシェアしよう!