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「でも。嫌いだった場所を、どうして今さら見たいのさ?」
比呂の疑問には、紫織は手をひらひらさせた。
「別にいいだろ、そんなこと。それより、桐生はどうなんだ。一ヶ月の休みは、取れたのか?」
それなんですが、と隼人は比呂の持つ、時間遡航の能力を織り交ぜながら話した。
「結果として、長期休暇は取らずに済むんです。ですから、吉永さんのスケジュールに合わせますよ」
あなたの都合のいい日に、旅立ちましょう。
こんな具合に、穏やかに隼人は話を運んだが、紫織の返事はワイルドだった。
「俺なら、今からでも行けるが」
「い、今から?」
「そちらに準備が必要なら、明日でもいい」
「待ってください。吉永さんにも、お勤めがあるのでは? もう、休暇に入られたのですか?」
「仕事なら、辞めてきたから」
「辞めた!?」
隼人と比呂は、同時に声を上げていた。
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