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「そんなあっさり、会社を辞めた、と!?」
「あの出版社、大手だよ!? もったいないよ!」
わあわあと騒ぐ隼人と比呂だが、紫織はまるで他人事のようにケロリとしている。
「いいんだよ。どうせ近いうちに、辞めるつもりでいたんだし」
「しかし!」
「それより、早いところ日時を決めてくれ。明日か? 明後日か?」
隼人は、紫織の様子を改めてうかがった。
落ち着き、どっしりと構えた、その姿。
(吉永さんは、この旅路に並みならぬ熱意を抱いている)
それは、何か覚悟めいたものすら、隼人に感じさせた。
「私は、明後日がオフです。比呂くんは、大丈夫?」
「僕は、いつでもOKだよ」
うん、とうなずき、隼人は宣言した。
「明後日、出発しましょう。集合場所は、ここ。時刻が決まり次第、メールでお知らせします」
解った、と紫織は静かに言った。
ただ、それだけ。
そして、そのままマンションから出て行った。
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