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(意外だったな) (意外だったね)  隼人と比呂は顔を見合わせ、ささやいた。  神妙な顔で、仏壇に手を合わせる紫織。  彼は、ちゃんと御仏前まで用意していたのだ。 「お若いのに、しっかりした方だ」  達夫は目を細めて、そんな彼に感心している。  紫織は、しばらく仏壇の前から動かず、代々の位牌や写真を見つめていた。  戒名では、隼人の曽祖父が解らない。  だが、古めかしい小さな写真の数々の中に、恩義ある人の姿を見出した。 (この人は……!)  ぎゅっと、心臓を掴まれたようだった。  そのまま、絞られるようだった。  思わず溢れそうになる、涙。  紫織はそれを、ぐっとこらえて、仏壇から少しだけ離れた。  そして、正座したまま達夫の方へ向き直り、両手を畳について深々と頭を下げた。

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