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 桐生家の墓は大きく、そして古かった。  古いが、達夫がこまめに通い、掃除などしているおかげで、小綺麗だ。  隼人がタオルで墓石を水拭きしていると、紫織が何やら渡してきた。 「良かったら、これも使ってくれ」  それは、墓掃除専用に開発された、ウェットタオルだった。  強力な薬剤ではなく、アルカリ電解水を使ったものなので、墓石にダメージを与えない。 「吉永さん、いつの間に?」  彼は、ずっと隼人たちと共に過ごして、これを買いに行く様子などなかったのだが。 「持参してたんだ。お墓は絶対に、きれいに掃除しようと決めていたからな」 「ありがとう。ひいおじいさんも、喜びます」  後は、ただ熱心に墓石を磨く、紫織だ。  そんな彼の様子を、言葉を、達夫は黙って見聞きしていた。  掃除が終わり、お参りとなると、紫織はちゃんと数珠まで取り出した。  これも、持参していたのだろう。  祈りを終えた面々が、一人、また一人と立ち上がる中、彼だけはいつまでもしゃがんでいた。  長い時間をかけて、心から英介を悼んでいた。

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