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第三十五章 故郷で笑顔に!

「そういえば。桐生の両親は今、どうしているんだ?」  フェリーの甲板で潮風に髪をなぶらせながら、紫織は隼人に訊ねた。  達夫宅には、結局三週間以上も滞在し、ようやく紫織は故郷へ足を向ける決意を固めたのだ。  もちろん、隼人と比呂も同行した。 「両親、ですか? 今は確か、東南アジアを廻っているはずです」  隼人の両親は、どちらも俳優だった。  ただ息子が成人すると、それを機に業界から、きれいさっぱり引退した。   『これからは、親の七光りに頼らないこと』 『自力で、立派な役者になって見せなさい』  父も母も、そう言い残し、それからは世界中を旅している。  娯楽の旅行と見せかけて、密かに人権を守る活動を支援しているのだ。  子どもや女性、障がいを持つ人などが、社会的に立場の弱い国は、未だに多い。  彼らに教育の機会や、働く場所を提供することが、旅暮らしの真の目的だった。

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