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「うぐぐ。こんなはずでは……」 「いいから、比呂くんは静かに寝てなさい」 「ごめんね、隼人さん。面目ない……」  30年の時間をさかのぼるくらい余裕、と考えていた比呂だ。  しかし、帰り道のことをすっかり忘れていた。  30年前から、今度は現代へ戻らないといけないのだ。  片道ではなく、往復。  合計60年もの時間旅行は、さすがの比呂にも大変つらかった。 (ああ。起きて、夕食の支度がしたいんだけどな)  ハウスキーパーのお手本のようなことを思う比呂だったが、体が満足に動かない。  気を抜くと、すぐに眠ってしまうのだ。  ウトウトと居眠りを繰り返していると、鼻に良い匂いをとらえた。  目を覚ますと、枕元には隼人がいる。  心配そうに、見守ってくれている。  そして、紫織がトレイを持って座敷へと入って来た。

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