182 / 229
2
「うぐぐ。こんなはずでは……」
「いいから、比呂くんは静かに寝てなさい」
「ごめんね、隼人さん。面目ない……」
30年の時間をさかのぼるくらい余裕、と考えていた比呂だ。
しかし、帰り道のことをすっかり忘れていた。
30年前から、今度は現代へ戻らないといけないのだ。
片道ではなく、往復。
合計60年もの時間旅行は、さすがの比呂にも大変つらかった。
(ああ。起きて、夕食の支度がしたいんだけどな)
ハウスキーパーのお手本のようなことを思う比呂だったが、体が満足に動かない。
気を抜くと、すぐに眠ってしまうのだ。
ウトウトと居眠りを繰り返していると、鼻に良い匂いをとらえた。
目を覚ますと、枕元には隼人がいる。
心配そうに、見守ってくれている。
そして、紫織がトレイを持って座敷へと入って来た。
ともだちにシェアしよう!

