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第三十八章 新しいステージ
比呂の疲れや体力は、幸いなことに早く癒えた。
「体に、気を付けてな」
「おじいちゃんも、ね」
「桐生。時々、連絡をするから」
「よろしく、紫織さん」
紫織と達夫に見送られ、隼人と共にマンションに帰ると、彼はさっそく腕を伸ばした。
「さぁ、隼人さん。僕の手を握って。一か月前へ、逆戻りするよ」
だが隼人は、その手を取らなかった。
「比呂くん。私は、このまま進もうと思うんだ」
「えっ」
「時間を遡らず、一ヶ月間まったく仕事をしなかった桐生 隼人でありたい」
比呂は、慌てた。
そうすると、隼人の信用はガタ落ちで、今後の活動にも影響が出る、と考えたからだ。
「僕なら、大丈夫だよ!? たった一ヶ月、時間を遡るくらいなら、疲れたりしないよ!?」
「心配だよ」
比呂くんのパワーは、猫神様になるために蓄えておいて欲しい。
そう語り掛ける隼人のまなざしは、とても優しい。
「それに。これで私を使わなくなるスポンサーなら、もう必要ない」
私は、私らしく生きて行きたいんだ。
こんなことを言い出す隼人の目は、凛々しく輝いている。
その決意に、比呂はうなずいた。
「解ったよ。じゃあ、これからも頑張ろうね!」
「ありがとう、比呂くん」
二人は微笑み合い、固い握手を交わした。
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