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第四十章 嘘ではないが本当でもない
「いってらっしゃい」
「いってきます」
そんな、何気ない日常の。
ささやかな会話を、比呂と交わして、隼人は事務所へと出かけた。
そこで待っていた笹山は、まず彼に軽いジャブを放つような言葉を、掛けてきた。
「さっそく、本題に入るね。実は、アイオイ化粧品さんと田川食品さんが、スポンサーを降りる、って言ってきてるんだ」
「いいでしょう。去る者は追わず、ですよ」
「えぇっ!? でも、桐生さん……」
語尾の弱いところを見ると、笹山は今回の件をひどく心配しているようだ。
そこで隼人は、彼を安心させるセリフを、堂々と述べた。
「大丈夫。あちらの方から戻ってくるような、そんな仕事をやって見せますよ!」
「さすが桐生さん!
手をぱちぱちと打ち鳴らした後、彼は明るい表情で、隼人にソファを勧めた。
二人で掛けて、ようやく落ち着いた空気が流れたが、笹山は容赦なかった。
今度は鋭い右ストレートのような言葉を、隼人に放ってきたのだ。
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