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「比呂くん。私は今、とても幸せだよ」
「隼人さん」
「だから、比呂くんも。比呂くんの幸せを、考えていいと思う」
疲れて、擦り切れて。
自分を見失っていた、隼人。
そんな私が潤いを取り戻せたのは、比呂のおかげだと隼人は告げた。
「今すぐでなくても、いいから。一人で悩まないで、いいから。一緒に答えを探そう」
「隼人さん……!」
比呂は、思わず隼人に抱きついていた。
両腕を彼の体に回し、その胸に頬を擦り付けて、いっぱいに息を吸った。
(隼人さんの匂いがする。優しい隼人さんの匂いがする!)
そんな比呂の頭を、よしよしと撫でながら、隼人は青原に答えた。
「青原さん。返事は、保留にしてくださいませんか?」
「参ったね。二人は、本当に。心から愛し合っているんだなぁ」
青原は、比呂に向けて声を掛けた。
「比呂くん。全体の幸せは、個の幸せが集まってできるものだと、私は思うよ」
「猫神様」
「多くのネコを救うことは大切だし、立派だ。だが、比呂くん自身が悲しいのでは、意味がない」
どうかな?
そんな青原に、比呂は顔を上げた。
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