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「あぁ、美味しかった。やっぱり、お寿司はいいね!」 「そんなに気に入ってくれたなら、また行こう」  お腹いっぱいになって帰って来た、隼人と比呂だ。  店内や運転中はオフにしていた携帯を、隼人がチェックすると、笹山からの着信が残されていた。 「笹山さんだ。どうしたのかな」  今日、隼人に青原と会うスケジュールを入れた笹山は、その日の午後と翌日を、休養日にしてくれていた。  青原は、個性的な人柄の、厳しい巨匠として知られている。  そんな人物と面談した後は、隼人が神経をすり減らし、疲れるだろうから、との思いやりからだ。  にもかかわらず、その笹山から連絡があったとは。  しかも、メールではなく、電話なのだ。 「緊急かもしれない」  隼人は、すぐに笹山へと折り返しの電話を掛けた。 「もしもし桐生です。何か、ありましたか?」 『あったよ、大有り! 青原さんが、桐生さん主演の映画を撮りたい、って!』 「えぇっ!」 『あの気難し屋の青原監督が、やけに興奮して! 自ら事務所にオファーの連絡くれたんだよ!  興奮しているのは、笹山も同じなのだが。  ひとまず明日は、ゆっくり休んで。  それから、隼人は今後の予定を、スタジオ青原と擦り合わせて行くことになった。 「隼人さん、良かったね!」 「ありがとう、比呂くん!」  幸先のいい再出発を、隼人は比呂と二人で喜び合った。

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