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隼人と比呂の危惧をよそに、青原の発言を笑ったりバカにしたりする者は、一人もいなかった。
「よく決心したね、比呂くん」
「素敵だわぁ。私もそんな風に、誰かを愛したいわぁ」
「悔いの無いように、生きなきゃな」
「結婚式とか、披露宴とかは、まだ?」
彼らの優しい声に、比呂は青原を見た。
「もしかして。青原さん、この人たちは……。みんな、あやかし……?」
「比呂くんの推察通りさ」
ニッと笑った青原を合図に、スタッフ全員が正体を現した。
ネコはもちろん、イヌにキツネにタヌキ。
恩返しで有名な、ツルやカメ。
サル、ウシ、シカ、ヘビなどの神様の遣い。
古来より、ヒトと関わってきた生き物のあやかしたちが、ずらりと揃っている。
「うわぁ……」
「これは壮観だ……」
比呂も隼人も、あまりのことに絶句した。
「今でも、多くのあやかしたちが、傍にいるものさ。ヒトが忘れてしまっているだけで、ね」
青原の言葉に、隼人は我に返った。
「しかし、私はただの人間ですよ? この場にいても、いいものですか?」
「桐生さんは、ヒトの代表だ。我々の仲間として、共に映画を創ろうじゃないか!」
とまどう隼人の手を、比呂が力強く握った。
「隼人さん、やろうよ!」
「比呂くん……そうだな。やろう、一緒に!」
青原と仲間たちの温かな拍手に包まれ、二人は目を輝かせていた。
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