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第4話 買われた身体

「ン……っ、ン、はっ……っ、っ」  シティホテルの一室に甘い声が響いてる。ダブルベッドとデスク。  ラブホテルじゃなくて、ちゃんとしたホテル。  そこで今日は買ってもらった。 「あっ……ね、このまま、一回口に出す? それとも……する?」  俺の身体。 「もう、入るよ?」 「あぁ」 「っ、わっ」  腕を引っ張られて、そのままダブルベッドの隣、壁にくっつくように置いてあるデスクの上に座らされた。 「っン」  ここでする?   きっとビジネスマンとかがここでお仕事してる、このデスクの上に座って、足を広げて。この人と。  明日は別の人がここで仕事をするかもしれない。メイクをするかもしれない。今日、セックスしてるこのデスクで。  ゾクゾクした。 「あっ……ン、ん」  深くて濃厚で蜜が溢れるようなキスをしながら、彼の手が俺の腰を撫でた。その手に応えるように足を開いて、ガウンを着たままの俺は腕を伸ばして、彼の首にしがみつくと、呼吸ごと食らうように激しいキスをしてきた。角度を変えて、何度も、何度も、さっきたくさん彼のをしゃぶってあげた舌を今度はしゃぶられて、吸われて。 「は、ぁっ」  キスが止まって、唇を離すと透明な糸がお互いの唇を繋げた。 「ゴム……」 「あ、ありがと」  普段は相手のゴムなんて使わない。穴とか開けられてることがあったらやばいから。けど、いいや。今、立てないし。  キスに感じちゃったから。  それに――。  ここで待ってたい。 「……」  ガウンを肩から滑り落として、腰紐でかろうじて留まっているだけ。足を開いて、太腿もあらわになった。はしたない格好で彼を待ってるとこ、見て欲しい。 「来て……」  いっぱいに足を広げた。ヒクついて、すごく物欲しそうにしてる孔を見せつけて。 「あっ」  もう一度、さっきのキスの続きに酔いながら、首にまた腕を絡めてく。 「ン、ンンっ」  乳首、摘まれて感じちゃう。たまんない。ねだるみたいに、小さな粒は快感欲しさに自己主張してる。触られたいって、いじめられたいって。 「やぁ……ン」  ピンと爪で弾かれると、身体の奥が熱くなって濡れたように感じる。 「あ、あ、あっ」  勃った乳首を指の柔らかいところで押し潰されて、引っ張られると、快感が増して、身体の奥が早くしてって期待してる。 「あっ、ン」  太腿を大きな手で撫でられるのがたまらなかった。媚びた甘い声を閉じ込めるように自分の口元を手の甲で押さえつけて、口でたくさんしゃぶった彼のそれを見つめる。  見つめて、興奮に喉が鳴った。口を押さえてる方の手じゃなくて、もう片方の掌で、張り詰めてる彼の先端を包むように握ってから、まだ唾液まみれのそれを音を立てながら扱いてあげる。  硬くて、すごい。  手できつく扱くとしかめっ面になってくれる。  俺の手、気持ちいい? 俺の中に、挿れたい?  「ね、挿れて?」  やば。本当に欲しいんだけど。 「あっ」  本当に、彼のが欲しいって思っちゃった。  すごいところに座って、足、はしたないくらいに思いっきり自分から開いるる。彼が挿れてくれるのを待ってる。  大きな両手が俺の膝裏をしっかりと掴んで固定した。ただそれだけで、もう目眩がする。 「あっ」  キスで潤んだ唇を噛み締めて、彼のペニスの先端が孔に触れると――。 「あっ、あっ、あぁっ……っ!」  溶けちゃそう。 「あっ、あぁぁっ、あンっ……あ、ンっ、すごい、おっきぃ、あ、あっ」  ゆっくり俺の中に彼が入ってくる。ゆっくり広げられてく。  ズブズブって、飲み込んでくのが、気持ち良くて、たまんない。 「あぁっ」  腰に食い込む指の強さすら快感で、いっぱいに広げられた身体の奥はこのまま、ここで、犯して欲しいって媚びてるみたい。 「あ、気持ち、ぃっ」  ほら、声も媚びて、甘ったるい。 「あぁっ」  ゆっくり、けど、強く、責め立てられて、喘ぎ声が止まんない。突かれる度に気持ちいい。引き抜かれそうになる度に切ないくらいに気持ちいい。 「あっ、あっ、あっ、ヤバいっ」  そこもっとして。 「あぁっ、あ、ね、おっきくて、気持ちい、激しいっ、あ、すごっ」  もっと強く奥犯して。 「あぁっン、っ、あっン」  ね、もっと。 「あ、ン……気持ちい?」  俺の身体で気持ち良くなって。 「あぁ」 「あ、あっ……よかった」  責められて、壁にしたたかに背中を打ち付けられるのも快感になる。全部をとろとろな快楽に浸したみたい。  全部、気持ちいい。 「嬉し……」  舌、絡めたキスがしたくて、また首にしがみついた。今の俺、ふやけた顔、しちゃってるかも。つま先まで気持ちいいのが染み込んで、キスしながら、背中を壁に打ち付けながら、奥までいっぱいに攻め立てられたい。もっとして、離れたくないってしゃぶりつく身体の奥まで彼に貫かれたい。 「キス、欲し……わっ、わ」 「しがみついてて」 「!」  ねぇ、重いよ。なのに彼は挿入したまま抱き抱えて、俺をそっと、優しくベッドに置いてくれた。硬い壁に激突してた背中は突然の柔らかさにゾクゾクってしてる。繋げたままの身体。しゃぶりついた孔をキュッと締めて。 「あ、やぁっ……」  首筋にキスをしてくれた。 「あぁっ……あ、ン」  奥深くを今度はゆっくり押し広げられながら、乳首を甘噛みされて、たまらない。ほら、俺のが涎垂らしてるみたい。気持ちいいって、キスもセックスも美味しいって濡れてる。 「あ、イッちゃうっ」 「……」 「あ、あ、あンっ」  大きな両手が俺の膝裏をしっかりと掴んで固定した。 「あっ、あっ、あぁっ……っ!」  腰がくねって、彼のを締め付けた時だった。 「名前」 「……ぇ?」 「名前は?」  もう美味しくて、たまらないって、しゃぶりついた時、だった。 「名前」 「あっ、あっ」  もう今、何も考えられないよ。気持ち良くて、美味しくて。 「教えて」 「あ、麻幌(まほろ)っ」 「……っ」  彼とのセックス以外、今、頭ん中、ない。 「名前、は?」 「麻幌……」 「あ、あっ」  彼の重みすら気持ちいい。乳首も、キスも、低い声も、なんもかんも。 「麻幌、イクとこ」 「あ、イクっ、イクっ、あ、あ、あぁぁぁぁっ」 「見せて」  今、このセックスのことしか、頭ん中、ないよ。

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